Text by 中野誠志
写真を初めてすぐの頃に、手ぶれをしないように遅いシャッタースピードを切らないように学びます。
ところが、ある程度撮影の経験を積んできた頃に、その常識を破って遅いシャッタースピードで撮影すると、静止している写真に躍動感を盛り込むという、一風変わった表現が可能となります。
水中写真のスローシャッター表現での撮り方を解説します。
スローシャッターとは、その名の通り遅いシャッタースピードのことです。
具体的にはマクロレンズで1/30秒ぐらいから、広角レンズでは1/15秒ぐらいからかと思います。
被写体や撮影するレンズによって、ちょうど良いシャッタースピードの長さが変わります。
また、背景の海の明るさと、被写体に当てるストロボの光量を左右する絞り値とIso感度も操作する必要がありますので、マニュアルモードでの撮影がやりやすいです。
何度か試してみてちょうど良いスローシャッターの設定を見つけてみて下さい。
スローシャッター表現では、被写体の動きに合わせてカメラを左右に振る流し撮りや、泳ぐ被写体と併走して撮影する追い撮りなども可能です。
躍動感を感じさせる撮影のポイントは、元々停止しているものと動いているものを同時に写して、停止しているものを流す表現で撮影することです。上の写真の場合は海底になります。
手持ちの方が通常は機動力があるので、三脚無しでのダイビングをお勧めします。
ナイトダイビングの場合、太陽という光源がありませんので、スローシャッター表現をするためには水中ライトでぶれの表現を与えることになります。
<撮影のポイント>
1:まず、カメラの露出を水中ライトに合わせるか、水中ライトの光量をカメラの露出に合わせます。
2:可能であればカメラの設定が【先幕シンクロ】から【後幕シンクロ】に変更します。
3:必要以上に露出オーバーにならないようにストロボを使用します。
水中ライトから少し離れたところを撮影するようにすれば、背景もだいぶ黒くすっきりとさせることができます。
各社からいろいろな水中ライトが発売されていますが、私が使用しているのはフィッシュアイ社のFIX neo 2000というライトを2灯使っています。
これを使っている理由は、
1:照射角100°と広い、
2:充電時間が2時間で満タン、陸上重量347g水中重量115gという驚異的な軽さ(RGBLUEシステム02は陸上565g水中205g)
3:陸上点灯が可能
4:軽く拭き上げればそのままライトにプラグを挿して充電可能なので、バッテリーを取り出す面倒が無い(素晴らしい!)
5:ライトヘッドが分離可能できるので飛行機OK
6:インテリジェントインフォパネル搭載で、バッテリー残時間がわかる
7:ライト出力が1%刻みで設定・認識可能なので多用途に使える
特にナイトダイビングにおける広角撮影でのスローシャッターの場合、短い露光時間を越える長時間露光になってくると、もはや手持ちではカメラを保持することができません。
三脚を使用しての水中撮影となります。
水中での広角スローシャッター表現の撮影ポイントとしては、停止しているものと動いているものを同時に撮影することです。
上の写真の場合、止まっているヤツデスナヒトデと泳ぐヒイラギを対比させながら水中ライトで露光し、一瞬のストロボ光で残像を焼き付けることでさらに写真に非日常感を加えています。
水中撮影用の専用三脚はこちら
シャッターを切る瞬間にカメラをぐるっと回す通称「ぐるぐる」。
コツはシャッターを切るときからカメラを回すのでは無く、カメラを回しながらシャッターを切ることです。
地形は主に太陽の光で露光し、被写体の魚は一瞬のストロボ光の閃光で焼き付けられます。
あんまり「ぐるんぐるん」やりすぎると、ストロボを海底にぶつけたり、いつの間にかストロボが変な方向を向いていたりします。
また、他の人に見られるとちょっと恥ずかしかったりするので、実行する際には周りにも気をつけて下さい(笑)
Text by 中野誠志
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