Text by 中野誠志
生物の中には、サンゴやイソギンチャクのように蛍光タンパクを所持している生き物がいます。
そうした蛍光タンパクを持つ生物たちは、肉眼では見えない紫外線の光を受けることで、その蛍光発光を励起して可視化することができます。
こうしたダイビングのことを蛍光発光ダイビング、またはフロー(Fluo)ダイビング と呼びます。
夜の真っ暗な海底一面に蛍光発光するサンゴたちの光景は、まさに宇宙を遊泳しているかのような幻想体験です!!
この技術は医学にも応用されていまして、特定のタンパク質を発光追跡していろいろな研究がなされているそうです。
著者の中野もこの水中生物の蛍光発光の撮影を追求していまして、今まで何度も「おはよう日本」などのテレビ番組で取り上げてもらっています。
2014/1/11
NHKの【おはよう日本】で特集されました!
http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2014/01/0111.html
2014/10/11
天草の海で私が水中撮影した番組が放送されました。
BSジャパン開局15周年特番『追え!光のメッセージ』
http://www.bs-j.co.jp/hikari/
Fluo(蛍光発光)Divingとは!!
ナイトダイビングをやったことある方の中にはご存じの方もいるかと思いますが、蛍光発光Fluorescentというものがあります。
左の残圧計には蓄光塗料を使ってあるわけですが、実は生物の中にも元々DNAに蛍光タンパクを所持しているものがいるそうで、発光するものたちがいるんです。
そうした生物たちの蛍光発光を見れるようにするのが、このFluo Divingというわけです。
私はそうした生物の蛍光発光を見るために特殊な水中ライトを使用しています。
上の写真のライト&モーション社のSOLA NIGHTSEAライトと、
KELDAN社のLUNA4 UVライトです。
これらのライトで照らしている状態で、そのままシロウミウシを撮影してみました。
このように、通常は青一色の世界となります。
次に、SOLA Night Seaで照らしている状態で、マスクやカメラの前に蛍光を励起するカメラフィルターをかざして観察します。
SOLA Night Seaで照らしながら、カメラにナイトシーカメラフィルターを装着して撮影。
シロウミウシのように、光らない生物は真っ暗になってしまい何も見えませんし写りません。
SOLA Night Seaに標準付属の白色光フィルターをつけた状態でシロウミウシを撮影。
通常の水中ライトやストロボで撮影するのと同じです。
<蛍光発光する生物の探し方>
蛍光発光する生物は、ブラックライト(UVライト)やブルーライトを照射した場合、青一色の世界の中で、鮮やかなオレンジ色に光っているように見えます。
そのまま撮影するとどうしても青く写ってしまいますので、これにナイトシーカメラフィルターを使って撮影すると、青の光をカットすることができて、蛍光発光を際立たせて撮影することが可能になります。
マクロレンズでの蛍光発光撮影において、問題となるのは照射する光が蛍光励起フィルターに映り込むことです。
ワイドビームタイプの蛍光発光ライトでこの問題が発生します。
そのため、マクロレンズでの蛍光発光撮影では、照射角が狭くて光量が強いUVライトやブルーライトを使用すると良いでしょう。
一番のお勧めはSOLA NIGHTSEAです。
レバー1つでワイド←→スポットの切り替えができますし、弱いワイド光からスポット光に変更した際には最初から光量が一番強い状態に設定されますから、そのまますぐに撮影に移ることができます。これがどのぐらい快適なことなのかは、一度撮影してみないとわからないでしょう。
フォトグラファーのことをとても良く考えて作ってあるライトだと思って本当に感心しています。
<広角レンズとドームポートでの蛍光発光(Fluo)フローダイビング撮影のやり方>
真っ暗な夜の海に幻想的に光るサンゴの上を泳ぐのは、とても感動的で神秘的な体験です。
その光景を写し込みたいと思うのは、いたって自然なことだと思います。
それには広角レンズ、照射角が広くて光量が強いUVライトまたはブルーライト、イエローフィルター、高感度に強いカメラ、の4つが必要です。
前述のSOLA NIGHTSEAはとても良いライトなのですが、照射角が60度なのでフィッシュアイレンズを使った広角撮影のためにはナイトシーが3~4灯ほど必要になってきます。
<蛍光発光の広角撮影に向いている水中ライト>
・ケルダン LUNA4 ブルー LED
・ケルダン LUNA4 UV LED
・ケルダン LUNA8 ブルー LED
・ケルダン LUNA8 UV LED
ブルーライトの方はUVライトよりも光量が強いです。
一方でUVライトは青い光が少ないので、フィルター無しで撮影したり、肉眼で観察する際に生物の蛍光発光をとても鮮やかに見ることができます。
SOLA NIGHTSEAの開発者チャールズ・マゼル氏に教えていただいたのですが、
「イエローフィルターをかけて撮影する場合は、UVライトでもブルーライトでも結果として得られる画像・映像は同じものになる」そうですので、光量を重視するか、フィルター無しのときの見た目を重視するかで、どちらにするか選択すると良いでしょう。
私は最近はケルダンのLUNA4を2灯使って、広角でのフローダイビング蛍光発光撮影を行っています。
読者の方のフローダイビングのイメージの参考になればと、蛍光発光撮影の水中写真ギャラリーを開設しています。
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Text by 中野誠志