Text by 中野誠志
写真とは、光と影の芸術です。
スヌート写真(スポットライト写真)とは、
【本来、まんべんなく光を当ててやるストロボ光や水中ライトの光を、わざと道具などによって狭め、局所的に被写体に当てる】
明暗を強調し、被写体へ視点を注目させる写真やテクニック技法のことです。
オリジナリティを持った水中写真作品を作り出すためにはいくつもの手法がありますが、このスヌート写真もその方法の1つとなります。
スヌート写真での光の当て方に関してですが、良い写真や成功イメージをお手本に、そのイメージに近づけていくという【ビジュアライゼーション】のやり方で、仕上がりをイメージしながら撮影し、実際に撮った写真を逆算して検討していくと学習が早いかと思います。
いきなり魚で練習する前にその辺の石ころあたりを狙ってみることから始めましょう。
私は普段のスヌート撮影では、光量が強い【 INON LF800-N 】をそのまま使ったり、専用オプションの集光レンズを1枚~2枚重ねて使用したり、ストロボで撮影する場合は【 INON ストロボZ-240 】に純正のスヌートセットを付けて1灯で撮影しています。
<1:スヌートの基本位置>
一応、基本的な位置としては、上の写真のようにカメラの真上にスヌート機材を構え、被写体に斜め前方から当てるような感じと、被写体真上から照射するような形が1つの基本になるかと思います。
これを元にスヌート撮影の技術を磨いて行ってみて下さい。
<2:被写体とスヌート先端の距離を近づける>
暗いところと明るいところの光の境界は、被写体とスヌート先端の距離が離れるほど曖昧になり、両者の距離が近ければ近いほどくっきりと出ます。
自分の周りは充分に暗いのに、いまいちこの写真の明暗の輪郭がシャープに出せないとお悩みの方は、たぶんこのスヌート先端が被写体から離れすぎていることが原因です。
光の原則で、【光は回り込む】という性質があります。
本来スヌート先端からまっすぐ飛ぶはずの光が拡散していってしまうわけです。
スヌートの先端の口径と、光の輪の大きさは比例します。
また、スヌート先端の口径の太さと、光の強さも比例します。
マクロレンズを使った最短付近での等倍撮影などで、小さな生物のスヌート表現を狙おうと思うと、かなり細い光が必要になるということです。そうすると光量が弱くなるので撮影は困難です。
誰からも教わらずにスヌート撮影を独学で始める人は、初めのうちはある程度大きな魚などを、フィッシュアイなどの広めのレンズを使って撮影して練習すると良いかと思います。
そうすることで最適なストロボ位置などを学習してから、段々と小さな生物を撮っていくと良いでしょう。
私も独学でスヌート撮影を始めましたので、最初はシグマの24ミリマクロレンズで練習し、それからシグマの50ミリマクロレンズに変え、その後100ミリマクロレンズやクローズアップレンズを使用して撮影しています。
被写体に当てるのでは無く、被写体の奥に光を当てることで、被写体のシルエットを際立たせることもできます。
いろいろなスヌート表現に挑戦してみるのもおもしろいですね。
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Text by 中野誠志
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